店番をしていると、お客さんの他にも色んな営業を目的とする人達が来店する。広告、先物取引、保険、置き薬、電話料金値下げ、看板、ホームページ、フリーペーパー、資産運用、イベント協賛、、宗教、などなど、ホントに色んな人が呼んでもないのにやってくる。電話での営業もめちゃめちゃ多い。必要な物は何一つ薦めてくれない。さりとて、一期一会。電話はすぐ断るけど、わざわざの飛び込み営業での来店の人にはまあ人にもよるけど、どんな営業の人がきても、まず名刺をもらって話を聞く。そして、途中でさえぎる。「性格的に物をすすめられると、もしもそれが欲しかったものでもいらないと思ってしまう。。すすめられるといりません!」みたいなことを言って、話の腰を折る。
そして、「今、一生懸命説明していただいたことには全く興味がないけれど、やってる仕事の内容、なぜその職業についたかがものすごい興味がある。。」みたいなことを伝える。最初は、拍子抜けした顔をされる。しかし仕事に不満を持ちながらも頑張って営業の仕事をやってる人が多いはずなので、「ボクもファンシー雑貨のルート営業ですけどやってたことあるんですよ」「いろいろ廻っていると態度が悪い人とかいるでしょ?」「給料は歩合制でけっこうもらえるんですか?」みたいなことを言って日頃の仕事のウップン魂をくすぐる。コチョコチョコチョっと。そうすると、だんだんその業界の裏話をバンバン話してくれる。枯れた大地に湧き出る泉。不平不満は湯水の如く。そりゃもう喋る喋る喋る。その話が新鮮で面白い。世の中には色んな職業があり、色んな人がいて、そしてそれぞれ事情がある。思い通りに、うまくいかない人間にこそ真実があり物語がある。それに自分とは全く別世界に生きる人たちの経験や価値観のなかには、意外な発見やヒントが隠されていることがあるはず!
はじめのうちは笑いながら相手の話に相槌を打ってるのだけど、無意識に負けず嫌いが働いてこちらも”仕事にまつわるエトセトラ”を身振り手振りを交えながら頭フル回転で大げさに喋っている。「ねぇねぇボクのほうが面白いでしょ?」と思いながら。でも、そうやって打ち明け話を喋った営業の人達とは、ほとんどもう一生逢うことがない。そう思うと喋りにも力が入る。 飛び込み営業の仕事は大変でシンドイと思うし、うちの店でちょっとでも楽しい時間が過ごせたと思ってくれたらいいんだけど。たぶん独りよがりで相手の気持ちは分からないけど。 色んな職業の人の話が聞きたいし、喋りたい。打ち明け話、面白い!
当然ながら人間はすました顔で社会生活を送り、色々なことを考え、色々な趣味趣向を持っている。ぱっと見ではわからない面白い人と喋りたい。めんどくさがり屋で、まったく社交的な人間ではないけれど、変わった考えの人と喋りたいと思う。 人生が旅だとしたら、ボクはまだ成田にも着いていないはずだ。
だけど、静かに暮らしたい。ただただ、静かに暮らしたい。心の平穏のために自分の価値観で行動する。目指すは、地味ながら優雅な生活。
寝て食うだけが取り柄なら獣と変わらぬその一生。 |